アメリカの底力

--今も続く移民力--

What is the source of USA's power


世界唯一の超大国となったアメリカ.この国を語るのはそう簡単でないし,とうてい私の手にはおえるようなものではない.今回の留学がたまたま2000年大統領選挙のとしにあたり,その大混乱を目のあたりにして,国際選挙監視団を派遣してあげねばと皮肉も言いたくなるが,そこはアメリカ.デモ隊あり,手作業集計あり,そして最後の砦は法廷闘争.どこかの国ように密室で首相が決まるよりはずっといい.さて,現在,外見に大変活力に満ちたアメリカの力はどこから来るのだろうか?ユダヤパワーによる金融力などいろいろあろうが専門でないのでよく分からない.ここでは,自分の手の届く範囲でアメリカのパワーの源泉について考えてみた.

1993年7月第5回遺伝的アルゴリズム国際学会 (5th International Conference on Genetic Algorithms)がここイリノイ大学で開催され,それに参加したときの強烈な印象,といっても農業のことであるが,は今も鮮明に残っている.シカゴ・オヘア国際空港でレンタカーを借り,I-57を南下すること2時間半,行けども行けども切れ目なく高速道路はトウモロコシ畑の中を走っていた.土地はどこまでも平坦である.これは何という国だ.どうしてこんな国と戦争したんだろうか?日本は竹槍と校庭にまで植えたサツマイモでやっと食いつないでいたのだから.今ここに滞在してアメリカ中西部の大穀倉地帯の規模を改めて知った.北はミシガン,東はインディアナ,オハイオ,ケンタッキー,西には,アイオワ,ミズーリ,カンザス,...,南には,...浅井信雄著「アメリカ50州を読む」に面白い逸話が紹介されている.1959年,訪米したフルシチョフが米国内各地を視察したとき,米国農業のモデルを見るために中西部の大農場にやってきた.効率のよい大規模農法を目のあたりにしたフルシチョフは,内心大いに驚き,あとで毛沢東に会った際,「米国はあんたがいうのと違って,張り子のトラではないぜ.甘く見ない方がいい」と忠告したという.

もちろん世界一のアメリカの農業は,この国の力の一つであるが,アメリカの力の源泉は,今も続く移民パワーであることがアメリカの大学を見ているとよく分かる.アメリカはいわずとしれた移民の国である.アメリカの科学技術の発展は,第2次世界大戦中,あるいはその後に集中するが,多くはドイツあるいは東欧からの優秀な移民に負うところが大きい.

アメリカでは大学が科学技術の発展に果たす役割は非常に大きいといわれている.研究の中心を担う大学院生の出身を見るとほとんどが外国人で占められている.私が滞在している研究室を見ても,スロバキア1,インド4,中国1,台湾1,ドイツ1,ポルトガル1,アメリカ1,ロシア1といった具合で,アメリカ人は一人しかいない.他の工学部系研究室も同様で,大部分が中国人といった研究室もあり,特に中国,インドからの学生が圧倒的に多数を占めている.まさに彼らはアメリカの大学の研究の基盤を担っているようにさえ思える.この傾向は,何もイリノイ大学に限ったものではなく,カリフォルニアではもっと顕著といわれている.生活費はどうするか?アメリカの大学では,大学院の学生は教授から Research Asistant として教授から給料をもらう.教授はその金をまかなうために金集めをしなければならない(大学からは原則として研究費はでない)し,お金が集められなければ優秀な学生をとることが出来ない.

学位をアメリカで取ると,アメリカでは国立研究機関を始め,多くの頭脳労働の機会が開かれている.彼らの多くはアメリカに定住する覚悟でアメリカに留学する.彼らはやがてアメリカの科学技術を支える人材として,アメリカに定住していく.NSF(National Science Foundation)が出している"Science and Engineering Indicators 2000" を基に少し数字を覗いてみよう.なお,以下の数字はいずれも1997年の数字である.

表1は,アメリカの大学(Collegeは除く)の教育スタッフの出生地の構成である.全体では外国生まれの割合が20%を占めている.社会科学系はそうでもないが,Engineering系で見ると,なんと36.3%が外国生まれであり,また,数学・コンピュータサイエンスでは25.7%を占めている.1996年の総人口のうち,外国生まれの割合が9.3%がであるというかあら,アカデミック分野における外国生まれの構成が非常に高いことが分かる.表2は,国別の人数構成である.これを見るとアジアのパワー,とりわけインドと中国が非常に高いことが分かる.産業界のデータは今のところ持ち合わせていないが,コンピュータソフト分野におけるインドの力などを考えると,アカデミック分野以上に技術分野における移民の力の大きさが予想される.

ヒョウ1 アメリカの大学ダイガク教員キョウインめる出生地シュッセイチベツ割合ワリアイ
Region of origin Total S&E Phycal Life Math&Comuter Social Engineering
science science science science
Total S&E faculty 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
U.S. origin 80.0 80.0 85.8 74.3 85.3 63.7
Foreign origin 20.0 20.0 14.2 25.7 14.7 36.3
Asia 10.5 9.6 6.1 14.2 7.1 23.5
Europe 5.3 7.4 4.5 6.4 3.6 6.2
North America 1.0 0.6 1.1 1.2 1.3 0.3
Central and South America 1.4 1.0 1.2 1.6 1.3 2.2
Africa 1.4 0.8 0.9 1.7 1.0 3.5
Others 0.5 0.7 0.4 0.6 0.4 0.5
ヒョウ2 アメリカの大学ダイガク教員キョウインめる国別クニベツ人数ニンズウ
Place of origin Total S&E Phycal Life Math&Comuter Social Engineering
science science science science
Total S&E faculty 21,545 3,665 3,340 5,261 4,495 4,784
India 6,876 688 1,014 2,086 1,496 1,597
China 4,830 939 591 1,745 642 913
UK 3,426 942 848 318 607 711
Taiwan 1,820 122 177 431 351 739
Germany 1,309 422 227 137 463 60
South Korea 1,218 336 189 96 451 146
Greece 1,044 196 190 163 353 142
Japan 1,022 20 104 285 137 476

このような視点で見ると,アメリカの力の源泉は,今も脈々と続く移民の力−−「移民力」−−こそではなかろうか?もちろんそれを可能にする国土と資源と自由を尊ぶ風土があってのことだ.この前提が崩れたときどうなるか?地球環境を考えたときアメリカ的多資源消費社会を続けることはもはや無理であることは明白である.2050年には,白人はマイノリティになるという.多くの国から移民してきた人たちが将来独自のコミュニティーを主張し,また貧富の差がさらに増大したとき...やはりこの国にもいずれ大きな変調が来る予感がする.


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