生物の適応能力


 イリノイでの野菜作りに挑戦して,いままで何気なく見ていた植物もじっくりと観察することができた. 米国中西部の大穀倉地帯であるイリノイ州は,大陸性の気候で,寒暖の差が激しく4月,5月は,雪あり,竜巻あり,真夏のような日があり, まるで四季が数日交代でランダムに訪れる.

日本から持ってきた種は最初は全て枯らしてしまった.しかし,状況が分かってくると案外うまくいった. 白菜,青梗菜,フダンソウなどは大変うまくできた.彼らの故郷ももともと大陸性気候の中国である. しかし日本で品種改良されているので,日本の気候にあったようになっている. しかし,彼らはイリノイの地で,見事に適応して生育した(2000年アメリカでの家庭菜園のページ参照). 生物は環境変動や過去の環境が遺伝子の中に保存されている.環境を記憶する大きなメモリを遺伝子の中に持っている.

 さて,このような生物の適応能力を最も端緒に見た例を紹介したい. 以下の写真は,菜園のはずれにこぼれダネから咲いていたコスモスと矢車草である. 撮影時期は7月である.実際は5月ごろから咲いていた. このコスモスは,次から次へと新芽が出て花を咲かせ続け,11月の中旬天候が急変して零下になるまでなき続けたのである. 日本ではコスモスは通常10月の2週間ほどの間咲くのみである.


5月から11月まで咲き続けたコスモス

 イリノイの地は,気候の変化が激しい.このコスモスは,チャンスがあるときには子孫を残すべく 花を咲かせ続けたのであろう.いつ気候が急変して子孫を残せなくなるかわからないから. 昔からこの地は厳しい天候の地であったのだろう.

 このような例はほかにもあった.何気なく見過ごしそうなタンポポである. タンポポは日本では3,4月と決まっている. こちらに4月に来たとき既にアパートの前の芝生に混じってタンポポが多く咲いていた. 特に気に留めなかったが,夏までずーと咲いていた.さて,秋になりもう無くなるだろう と思っていたらなんと11月になり,土が凍てつき雪が舞っているまで咲いているではないか. タンポポも,チャンスがあれば子孫を残すべく4月から11月まで咲き続けたのである. 現在もこの地の気候は厳しいく,寒暖の差は激しいが,昔はもっと厳しい環境であったのであろう. その中で,生き残る術は,「チャンスがあれば常に子孫を残す活動をする」ということである. この進化の力の一端を見た感じである.


11月27日,気温はマイナス5度,霜の中で咲き続けるタンポポ

 私が研究している遺伝的アルゴリズムにも,非常に関係がある. 遺伝的アルゴリズムは,通常の方法では解くことが困難な問題を, 解の候補を仮想生物に見立てて生物進化の過程をコンピュータの中で模擬して 解く手法である.研究に行き詰ったときなど,生物の進化のパワーの偉大さと神秘さに 思いをめぐらせている.


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